「アジュガを夢にみて」
作者:有魚神弥

DLpixivbooth
※本文テキストや画像素材はDLから


あなたの家族って、こんなだったっけ?

 

人数:1人~(ソロ、タイマン、2PL、複数人)
時間:1時間~
推奨技能:目星
発狂:中~高程度
ロスト:不明
備考:新規・既存問わず、HO有り
HO:あなたは心休まる家庭を夢にみたことがある。

 


◆◇◆ 概要 ◆◇◆

「ご飯まだかかりそうだからゆっくりしててね」
ぼんやりと帰宅したあなたに母親の声がかかる。
そういえば今日は家族全員が揃っている日だ。
けれど、あれ?
あなたの家族って、こんなだったっけ?

 家族×幸福×疑念

HO:あなたは心休まる家庭を夢にみたことがある。


記憶がぼんやりとした状態で帰宅した探索者が"家族たち"と触れ合うほのぼのシナリオです。
一部地雷になり得る要素がある気がしますが、ネタバレになりかねないので事前明記はしていません。読む際、遊ぶ際にはお気をつけください。

推奨技能に一応で目星と書きましたが、無くてもなんとかなると思うしなんならアイデアでも判定できるので、連れていきたい探索者を突っ込むといいと思います。
ロスト率はPCやPLによりまくると思って分からなくなったので不明にしておきました。無事な人は本当になんともなく帰ってくるだろうし、ダメな人は本当にあっさりとロストしかねないので、一概にこれくらいと言いづらいんですよね。
HOは公開されているもののみで、秘匿内容はありません。またPCが複数人いる場合は、一人でもHOに該当していれば大丈夫です。

こんなHOですけど、心休まる家庭を夢にみたことがある探索者は来ない方がいいと思います。

 

◆◇◆ 利用規約 ◆◇◆
シナリオ利用規約に目を通し、理解いただいた上でご使用ください。


◆◇◆ 権利表示 ◆◇◆
本作は、「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright (C)1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION


◆◇◆ 更新履歴 ◆◇◆
2022.07.21 公開開始。

 



以下本文です。

 

 

 

 

 




◆◇◆ はじめに ◆◇◆
ここから先はシナリオ内容に触れていきます。
PL予定の方は読まないようお気をつけください。

作者は本来、シナリオ側からPCの感情や思考を指定する地の文を書きたくない派の作者です。たとえば人間の死体を見て「あなたは恐怖を感じた/感じるだろう」ではなく「あなたは恐怖を感じるかもしれない」のように、「おおよそ不快な気持ちになるだろうけどならない可能性もあるから、どう思ったかの詳細はPCとPLが決めてね」スタイルにしたい派なのです。
しかし今回のシナリオは「暗示によってPCがそう思いそう感じることが当然であり、自然であり、そうなるように決められている」という前提があるため、PCの感情思考を断定するような地の文が多くなっています。ご了承ください。
また改変は自由ですが、その際はこういったことを念頭に置いた上で行っていただけると、作者はとても嬉しいです。

また、本シナリオ中では度々「お母さん色々頑張ってる!」「お母さんすごい!」「お母さん大好き!」といったような描写や思考の断定が発生します。これは単に「"母親"というものに憧れている奴らが、そういう設定でおままごとをしている」というだけで、「家事をなんでも一人でこなし皆を愛し皆に愛される母」はシナリオ中には実在しません。ぼくたちのかんがえたさいきょうのははおやです。これは「よくわからないけど母親というのはとてもすごいもの!」という純粋で単純な概念と理想により形作られたもので、決して「家のことは全て母親がやるべき」といった古のジェンダー感を踏襲するものではありません。
他にも姉弟の部屋とか家族たちの行動とかに漠然とした古のジェンダー感的なサムシングが出てくるところがありますが、これも「人間の文化というのはこういうものらしい!」という学習の結果で、押し付けや差別的な意図によるものではありません。

そういった「自分の思考や感情が自分とは別の場所で管理されてるような気味の悪さ」「非人間たちが人間を学んでみた結果、人間からはなんかどっかズレてるように感じられる気持ち悪さ」みたいなものが本シナリオのテーマであり、特に注意書きするほどでもないかなぁと思ったので事前の明記はしませんでしたが、こうしたシナリオ上の構造やジェンダー感の押し付けなどに過敏であったり忌避感や嫌悪感といったものを抱きやすかったりする方と、このシナリオで遊ぼうと考えている場合はお気を付けください。

 


◆◇◆ 背景 ◆◇◆
あるところに、四体の神話生物がいました。みなそれぞれ別の種族でしたが、誰もがシュブ=ニグラスを信仰し、"母親"というものに興味を持っていました。特に人間の母親や家族に憧れていたので、彼らはドリームランドの一画に一軒家を作って家族ごっこを始めました。
母親をはじめ父親、兄、姉の役をローテーションして遊んでいたある日、誰かが「本物の人間を呼んでみよう」と言い出しました。彼らは自分たちと同じように"家族"に憧れを持っていた人間を呼んで、いつもと違った家族ごっこをしてみようと考えました。
そうして、探索者は呼ばれたのです。探索者に与えられたのは、人間らしいリアリティを持った末っ子の役でした。

彼らにとって探索者は「たまたま条件に合ってたまたま呼び込んだだけの、いくらでも代わりのいる家族ごっこのお人形」にすぎません。なので探索者個人に執着することはなく、帰るなら「えー帰っちゃうのーつまんなーい」くらいで帰してくれます。帰る際は最後に「楽しかったよ、かわいいお人形さん」と言ってくれますが、当然感謝なんてものはありません。お礼もしません。あるいはこれが彼らなりの感謝なのかもしれませんが、人間が知る必要はありません。

神話生物たちは連れてきた探索者に「ここが自分の家である」「彼らが自分の家族である」という暗示をかけています。その暗示の効果で、探索者には神話生物である彼らが人間に見えるのです。同時に探索者は記憶喪失状態でぼんやりとしていますが、これは暗示をかけるために邪魔な記憶に蓋をしたからです。おままごと遊び中に、現実の本当の家族の話をするのは無粋ですから。
暗示を解き記憶の蓋を開けるための"鍵"を家の中の一室――探索者にあてがわれた子供部屋の奥の棚にしまっているので「その棚には触らないように、開けないように」と家族たちは注意をします。"鍵"は箱の形をしていて、その中には悪いことを封じ込めているのだから、けして開けてはいけないよ。危ないのだから。あなたのためなのだから。

神話生物はそれぞれ「空鬼(株式会社アークライト『クトゥルフ神話TRPG』初版、KADOKAWA、2015年、173ページ。)」「食屍鬼(株式会社アークライト『クトゥルフ神話TRPG』初版、KADOKAWA、2015年、180ページ。)」「ショゴス(株式会社アークライト『クトゥルフ神話TRPG』初版、KADOKAWA、2015年、181ページ。)」「ガスト(株式会社アークライト『クトゥルフ神話TRPG』初版、KADOKAWA、2015年、172ページ。)」ですが、シナリオ中で姿やステータスが出てくることはありません。

 


◆◇◆ 共通処理 ◆◇◆
・HOについて
HO:あなたは心休まる家庭を夢にみたことがある。

PCが複数人いる場合、一人でもHOに該当していれば大丈夫です。
HOに該当しないPC(非HOPC)は「なにかの弾みでHOPCと一緒に連れてこられた」ことになります。タイマンや2PL等で遊びたい際にご活用ください。
なおシナリオ本文では基本的にソロで遊ぶことを仮定して描写等を書いています。人数を増やす場合は適宜改変してください。

・記憶喪失
探索者はこの家が自分の家であり、この家族が自分の家族だと思い込まされています。(非HOPCの場合はここは友達の家で、この家族は友達の家族であると認識になります)それに伴って、記憶の一部に蓋がされている状態です。下の名前以外のほとんどがぼんやりとしており、特に本当の家族については存在していたことすら思い出せないような状態です。

・PCの扱い
HOPCは家族の末っ子(複数人いる場合、PC間での兄姉弟妹双子は自由に)、非HOPCはその末っ子の友達として扱われます。非HOPCは共に同じように記憶喪失になり、友達が遊びに来たから一緒にお夕飯食べようね~といった風に認識されます。
非HOPCも「穏やかで癒される家庭だなぁ」と思うことで、HOPCと同じようにSAN値が回復します。当然、記憶を取り戻した時も同じようにSANチェックが発生します。

・SAN回復&減少
記憶喪失中に家族と触れ合うことで、幸せで心休まる家庭を実感してSAN値が1回復することがあります。最大で+4になります。
ここで回復した値をxとして、記憶を取り戻した時に「x/xd2」のSANチェックが発生します。最大で「4/4d2」になり、回復が0だった場合でも「0/1」のSAN値が減少します。

 


◆◇◆ NPC ◆◇◆
NPCたちはそれぞれPCが<POW*2>を振ることになる行動を取った後は、PCからの質問とかに答えてくれるようになります。とは言え何を訊かれても普通の家庭として当たり障りのないような回答しかしません。時間がかかるようなことや他の人の意見が必要そうなことは「夕飯の後で見てみよう」「夕飯の時にみんなに相談しよう」といった風に答えます。

そして会話開始からゲーム内時間で15分もしたら「夕飯の前に他のみんなにも顔を見せてあげて」「夕飯前に少し部屋でゆっくりしたら」という風に次へ行くことを促します。みんな末っ子の保護者して遊びたいだろう、自分ばかり独り占めするのは悪いだろうという気遣いです。
とは言えゲーム内時間の計り方はアバウトで大丈夫です。メタ的には進行をスムーズにする&KPがボロを出しづらくするための時間設定ですので、KPとPLが満足するまでRPしたら次へ、でいいと思います。

PCが部屋を移動する際に「PCの部屋の奥の棚にある箱は開けてはいけない」と忠告します。理由を訊かれたら「危ないから」「あなたのため」のように答えます。でもたとえ開けようとしたり開けちゃったりしても、怒ったり叱ったり責めたりはしません。優しい家族なので。
真相はおままごとをするために邪魔な記憶を閉じ込めてあるからです。
開けて思い出しちゃったら思い出しちゃったで別にどうでもいいと思ってます。帰っちゃうなら次の人間を探せばいいだけ。帰らないならまた要らないものは捨てて仕切り直せばいいだけ。

みんなPCに対して好意的に優しく接し、とにかく絶対にPCを肯定します。たとえいたずらしても、言うこと聞かなくても、ダメって言われた箱を開けても、全て思い出しても、化け物と罵っても、攻撃しても、家から出ようとしても、絶対に。だってそういう役ですから。みんな心休まる家庭の一員なので、みんなそのように演じます。それがルールのおままごとですから。

NPCに対して<心理学>を使用した場合は自動失敗として扱い、「家族を疑うようなことを考えてしまうなんて、いけないことをしてしまった」というように処理をしてください。
それに加えて、ファンブルの場合は「こんなに素晴らしい家族を探るような真似はする必要がないと思い至る」、クリティカルの場合は「いや、どうしてそのように思ったのだろう。何か思考が自分のものでないような、居心地の悪さを感じた」という風にするといいと思います。

家のこと、おままごとのルール等については共通認識の設定があるため、質問した場合はみんな同じようなことを答えます。
以下はその例をまとめたものです。これを参考に各役割ごとに言いそうな感じにRPしてください。ここにないものはなんかそれっぽくでっちあげてください。

 

[質疑応答例]
・スマホ、水道などが正常に動かない
→壊れているのかな?夕飯の後で確認してみよう。

・玄関等、家の中がやたらと綺麗すぎる
→母:ありがとう、頑張った甲斐があったわ。
 母以外:お母さんが頑張っているからね。

・空の色や景色がおかしい
→いつも通りだと思うけど……疲れてるのかな?夕飯食べたら早めに休みな。

・家族写真が不自然
→気付かなかった。汚れちゃったかな?夕飯の後で確認しようか。

・花の香りがしない
→風邪でもひいた?今日はゆっくり風呂に入って早く寝たほうがいいよ。

・花が生花じゃないっぽい
→あんまり綺麗だと作り物みたいに見えるよね。

・姉の服がおかしい
→姉:そうかな?サイズが合わないのも増えてきたかも。夕飯の後にもう一度確認しようかな。
 姉以外:お姉ちゃんはお洒落さんで色々な服を持ってるからそう思えるのもあるのかもね。

・兄の本の内容
→兄:PCにはまだ難しいかもな。今度一緒に読もうか、教えてあげる。
 兄以外:PCにはまだ難しいのかもね。今度お兄ちゃんに教えてもらったら?

・今日の夕飯は?
→母:秘密、夕飯までのお楽しみ。ヒントはあなたの好きなものよ。
 母以外:詳しくは分からないけど、PCの好きなものを作るって張り切ってた。

・自分の家/家族じゃないみたい
→どうしたの?何か嫌なことでもあった?私達はいつでもPCの味方だからね。

 


◆◇◆ 導入 ◆◇◆
 ぼんやりと揺らぎ漂うような意識が、しだいに定まってくる。いつの間にか閉じていた目蓋をゆっくりと上げる。あなたは、見知らぬ玄関に立っている。
 整理整頓と掃除が行き届いた綺麗で清潔な家であることが見て取れる廊下から、美味しそうでどこか懐かしいような匂いがあなたの鼻をくすぐる。
 それに誘われるようにあなたの脚は、それが当然とでも言うように進み出す。

 見慣れた玄関で靴を脱いで、歩き慣れた廊下を通って、薄く開いていた扉を開けて、いつものリビングとダイニングを通り抜けて、キッチンへ向かう。調理台の前に立っていた見知らぬ、いや、見慣れた顔が振り向いた。

「おかえりなさい、ご飯まだかかりそうだから、ゆっくりしててね」

 そう言って今度は流しへと向かった母の後ろ姿をぼんやりと見ていたあなたは、そういえば今日は家族全員が揃っている日だと思い出す。みんなで夕飯を囲めることに、きっと母親ははりきっているのだろう。
 そうだ、ここはあなたの家だ。なんだかぼんやりとしていて、下の名前くらいしか思い出せないけれど、しかしあなたがこの家の末の子供であることは確かだった。
 さて、帰宅したのだから家族に――まずは目の前の母に挨拶と、なにか話をしなければ。

・非HOPCがいる場合
 そして、そうだ、あなたはそんな友人の家に遊びに来たのだった。せっかくだから夕飯も食べて行ってと誘われている。
 まずは揃っているらしい家族に挨拶をするのがいいだろう。

これはこの家で行われるおままごとのためにPCが与えられた"設定"(HO)に基づいて勝手にぶち込まれるモノローグ(暗示・洗脳)のため、PC本人の意思やキャラクター設定は全く関係なく進みます。
HOPC、非HOPCの描写は秘匿にする必要はないので普通にオープンで渡してください。

 


◆◇◆ LDK ◆◇◆
 明るく清潔なリビングダイニングキッチン。シックな雰囲気でまとめられた部屋には、L字型キッチン、冷蔵庫、食器棚、電話台、ダイニングテーブル、L字型ソファ、ローテーブル、テレビ台とテレビ、飾り棚があり、どこも丁寧に掃除されている。
 棚には家族写真が入った写真立てなどが飾られており、綺麗に整えられている。
 母がキッチンで夕飯の支度をしている。

<目星><アイデア>
▽失敗
 食器や置物など様々な見覚えのあるものが置かれており、飾り棚には写真立てが綺麗に並べられている。しかしどれもこれもいつ撮った写真だっただろうか、思い出すことができない。

▽成功(失敗に+)
 それにどの人物の顔もどこかぼんやりとしている。まるでぼかし効果でもかけられているかのようだ。

▽クリティカル(成功に+)
 よく見れば写真に写っている人物は人数や背格好、服装の系統までもがバラバラに見える。一つの家族が別の日に撮ったにしても、あまりにもバラバラに感じられるだろう。

▽ファンブル
 飾り棚に並べられた写真立ての一つに目が留まる。いつだったかの旅行で、家族揃って撮ったもので、楽しかった思い出と懐かしさを感じる。

 

[母]
 母はどうやら手を洗っていたようで、備え付けているタオルで濡れた手をよく拭くとあなたに向き直ると、柔らかく手招きをする。
 ふらりと身体が傾いでふらふらと足が動く。一歩、二歩……そうして目の前までやってきたあなたを、母は優しく、けれどしっかりとした力でもって抱き締めた。しっとりとした温かい手が服越しに背をとんとんと叩く。ぐずる幼子をあやすような手付きに、身体から力が抜けていく。

<POW*2>
▽失敗
 時間が止まったかのように感じられる、あまりにも穏やかな時間が流れる。とんとんと優しい衝撃が、温かな体温が伝わる度に、深い溜息がこぼれる。
 そうだ、あなたは、昔から母にこうされるのが好きだった気がする。
SAN+1。

▽ファンブル(失敗に+)
 ほっとした心の底から、この人の子供でよかった、という思いが湧き上がってくる。

▽成功
 穏やかな時間が流れる。とんとんと優しい衝撃とともに温もりが伝わってくる。いつまでもこうしていたいような、そんな気さえしてくる。

▽クリティカル(成功に+)
 いいや、違う、騙されてはいけない。……誰に?何を?理由は分からないが突然、途方もない違和感のようなものに襲われる。何かがおかしい、そんな気がした。


・判定後
 体温がすっかり移りあった頃に、母はそっと身体を離してあなたの目を覗き見て、優しく笑いかけた。
「元気出た?なんだかぼうっとして、疲れているように見えたから」

ここからは質疑応答や雑談の時間です。
15分くらいしたら母は「名残惜しいけど、お母さん夕飯作っちゃうから、みんなにも顔見せてあげなさい」「ああそうだ、何度も言ってるけど、あなたの部屋の一番奥の棚にある箱は開けちゃダメよ」みたいに言って調理を再開します。

 


◆◇◆ 両親の部屋 ◆◇◆
 落ち着いた印象を受ける両親の寝室。淡いラベンダー色が基調とされた室内には、ダブルベッド、サイドテーブル、デスク、本棚、タンス、ドレッサー、棚、クローゼットがある。
 父がデスクに向かって仕事をしている。

<目星><アイデア>
▽失敗
 サイドテーブルに花瓶が置かれており、そこに紫色の花が活けられていることに気付く。やけに瑞々しいように感じられる綺麗な花だ。

▽成功(失敗に+)
 ラベンダーだろうか。それにしてはあまり、いやほとんど香りがしないように思える。

▽クリティカル(成功に+)
 よく見れば花や茎のつややかに見える部分は、生物的な輝き方ではないように思える。どちらかと言えば無機質な、つやつやとしたプラスチックのように感じられるだろう。

▽ファンブル
 サイドテーブルにラベンダーの花が活けられた花瓶が置かれている。とても綺麗で、いい香りがする。

元々書斎で寝室は二階奥の部屋でしたが、末っ子の部屋を作ることになり寝室を書斎と合体させたものです。

 

[父]
 書き物をしていたらしい父は、あなたが入ってきたことに気がつくと静かに筆を置いた。椅子の座面をくるりと回して身体ごとあなたの方を向くと、ちょいちょいと手招きをする。
 ふらりと身体が傾いでふらふらと足が動く。一歩、二歩……そうして目の前までやってきたあなたをしゃがませると、その頭をそっと撫ぜた。ゆるりゆるりと繰り返されるそれに、身体から力が抜けていく。

<POW*2>
▽失敗
 大きくて温かくて優しい手の感触が伝わってくる。時折髪を梳くように差し込まれる指先が頭皮を撫でていくのが気持ちいい。
 そうだ、あなたは、昔から父にこうされるのが好きだった気がする。
SAN+1。

▽ファンブル(失敗に+)
 ほっとした心の底から、この人が父親でよかった、という思いが湧き上がってくる。

▽成功
 大きくて温かくて優しい手の感触が伝わってくる。時折髪を梳くように差し込まれる指先が頭皮を撫でていく。いつまでもこうしていたいような、そんな気さえしてくる。

▽クリティカル(成功に+)
 いいや、違う、騙されてはいけない。……誰に?何を?理由は分からないが突然、途方もない違和感のようなものに襲われる。何かがおかしい、そんな気がした。

髪の毛がないとかめっちゃ短いとかいう場合は適宜改変してください。

・判定後
 ひとしきり撫でてからそっと手を離した父は、あなたの目を見て慈しむように笑いかけた。
「最近頑張っているみたいだからな、ご褒美だ。お父さんはお前のことを応援しているよ」

ここからは質疑応答や雑談の時間です。
15分くらいしたら父は「夕飯前にみんなにも顔を見せてあげなさい」「夕飯前に部屋で少し休んだらどうだ」「ああそうだ、何度も言ってるけど、お前の部屋の一番奥の棚にある箱は開けてはいけないよ」みたいに言って仕事を再開します。

 


◆◇◆ 姉の部屋 ◆◇◆
 明るく可愛らしい印象を受ける姉の部屋。白と淡い桃色が基調の部屋には、ベッド、デスク、本棚、タンス、クローゼット、棚が置かれている。
 姉がタンスとクローゼットの間で洋服の整理整頓をしている。

<目星><アイデア>
▽失敗
 可愛いものから格好いいものまで、様々な服がある。しかしそれらが並んでいると、なにか違和感があるように思える。

▽成功(失敗に+)
 どの服もサイズがまちまちで、姉の体格にぴったりのもの、少し大きいようなもの、大分小さい気がするものなどが雑多に並んでいるように見える。

▽クリティカル(成功に+)
 いや、そもそも姉には明らかに大きすぎて持て余しそうなものや、小さすぎて入らないだろうものまでもが紛れているようだ。

▽ファンブル
 可愛いものや格好いいものなど様々な服があり、これを着こなせる姉はお洒落だなと感じる。

本当に着替えるわけじゃないので、サイズが合ってなくても問題ないのです。

 

[姉]
 服を並べたり畳んだりしていた姉はあなたが入ってきたことに気が付くと作業の手を止めてあなたを見た。そして片手の人差し指でデスクの上を指す。つられてそちらを見れば、クッキーが盛られた深皿が置かれている。
 あなたがクッキーを見付けたことに気付いた姉は、デスクへ伸ばしていた人差し指を唇に当ててにこりと笑った。
「昼間に焼いたの。夕飯前だけど、内緒で食べていいよ」
 その言葉に自然とあなたの手は伸びて、指先がクッキーを一枚つかみ、口へ運んだ。

<POW*2>
▽失敗
 歯を立てるとさくりと割れ、数度咀嚼すればほろほろと崩れ溶けていく、なめらかな舌触りのクッキーだ。渦巻き模様の白い部分と黒い部分で少し甘さが違うのがアクセントになっていて、優しい甘さとほんの少しのほろ苦さがあなたに美味しさを訴えてくる。
SAN+1。

▽ファンブル(失敗に+)
 ほっとした心の底から、この人が姉でよかった、という思いが湧き上がってくる。

▽成功
 さくさくほろほろ食感で、優しい甘さとほんの少しのほろ苦さが美味しいクッキーだ。何枚でも食べたいような、そんな気さえしてくる。

▽クリティカル(成功に+)
 いいや、違う、騙されてはいけない。……誰に?何を?理由は分からないが突然、途方もない違和感のようなものに襲われる。何かがおかしい、そんな気がした。

・判定後
 一口食べたあなたを見守る姉は、優しい目をして笑った。
「美味しい?ふふ、顔見れば分かるよ。よかった、あんたこれ好きだったでしょ?」

ここからは質疑応答や雑談の時間です。
15分くらいしたら姉は「みんなにも顔見せてあげたら」「夕飯前に部屋で少し休んだら?」「ああそうだ、何度も言ってるけど、あんたの部屋の一番奥の棚にある箱は開けちゃダメよ」みたいに言って服の整理を再開します。

 


◆◇◆ 兄の部屋 ◆◇◆
 クールな印象を受ける兄の部屋。爽やかなブルーが基調の部屋には、ベッド、デスク、本棚、タンス、クローゼット、棚が置かれている。
 兄がベッドに腰掛けて本を読んでいる。

<目星><アイデア>
▽失敗
 本棚には様々な難しそうな本が置かれており、兄が読んでいるのもその中の一つのようだ。どんなものを読んでいるのか知ろうとしても、よほど難しいのか言語が違うのか、どんな内容なのかは全く分からない。

▽成功(失敗に+)
 中にはぐちゃりとした線が引かれただけのような文字のものもある。はたしてこれは読むことができるものなのだろうか。

▽クリティカル(成功に+)
 いや、そもそもこのぐちゃぐちゃと規則性無く引かれた線のようなものは文字なのだろうか。この本は本としての機能を果たしているのだろうか。本棚をまじまじと見ていれば、そんな疑問が過ぎるだろう。

▽ファンブル
 本棚に並んだ難しそうな本の一つを読んでいる兄が、とても賢く格好よく見える。

ミニチュアの本に、書いてある風に線が引いてあるだけみたいなやつです。

 

[兄]
 厚い本を読んでいた兄は、あなたが入ってきたことに気が付くと手元にあった栞を挟んで本を閉じた。「そういえば」とつぶやいて、小さく手招きをする。
 それを見たあなたの足はゆっくりと兄に近付き、目の前まできたあなたに向かって兄は楽しそうに話始める。
「この前言ってた組紐のストラップを作ってほしいってやつ、次の休みに作るから今度一緒に何色にするか選ぼう」

<POW*2>
▽失敗
 手先の器用な兄は、昔から折り紙や粘土細工やミサンガや、色々なものを作ってくれていて、兄が作るものはセンスが良くて、どんなものでも気に入っていた。
 何よりも、いつだかにこぼした些細な願いを、兄が覚えていて叶えようとしてくれることを嬉しく感じる。
SAN+1。

▽ファンブル(失敗に+)
 ほっとした心の底から、この人が兄でよかった、という思いが湧き上がってくる。

▽成功
 兄は手先の器用で昔から色々なものを作ってくれていて、なおかついつだかこぼした些細なことでも覚えていてくれる優しい人だ。いつまでも一緒にいたいような、そんな気さえしてくる。

▽クリティカル(成功に+)
 いいや、違う、騙されてはいけない。……誰に?何を?理由は分からないが突然、途方もない違和感のようなものに襲われる。何かがおかしい、そんな気がした。

・判定後
 あなたの様子を微笑ましげに眺めていた兄は、いいことを思いついたように笑った。
「そうだ、せっかくだから、家族みんなで色違いのお揃いのを作ろうか」

ここからは質疑応答や雑談の時間です。
15分くらいしたら兄は「みんなにも顔見せてあげなよ」「夕飯前に少し部屋で休んだらどうだ?」「ああそうだ、何度も言ってるけど、お前の部屋の一番奥の棚にある箱は開けちゃダメだからな」みたいに言って読書を再開します。

 


◆◇◆ その他の家の中 ◆◇◆
※間取り図あり

一階:玄関、脱衣所・浴室、トイレ、リビングダイニングキッチン、両親の部屋
二階:トイレ、ベランダ、姉の部屋、兄の部屋、PCの部屋

間取り図は人数差分あり。
一階はダイニングテーブルの椅子の数。6人と8人。
二階はPC部屋のベッドの数。1つと2つ。またダブルベッドにすることで最大4人まではこの図面で対応可能。

家の中では一部屋ごとに<目星><アイデア>が振れ、成功・クリティカルするとこの家の作り物っぽさに気付けます。失敗した場合は何か違和感はあるが普通の家だと感じて、ファンブルだと居心地のいい自分の家だと思います。

家の中は等身大ドールハウスのようになっており、PCや家族の持ち物もどこかドールハウスの小物のようです。しかし、PCには「この家・家族・家庭が正常に見える暗示」がかけられているため、それに気付くことは難しいでしょう。


[苗字について]
 この家族の苗字について気にしようとして、しかしそれは霧散してしまった。たしかに、どうせみんな同じ苗字では呼んだところで意味もないのだから、考える必要はないだろう。

神話生物たちにとって役割以外の情報は重要視されておらず特に設定されていないので、それについて探索者が考える必要はないです。


[服装や持ち物について]
 服装は帰宅したばかりなのだから普段外出する時に着ているもので、まだ靴も脱いでいない。
 持ち物はスマートフォンだけのようだ。

<目星><アイデア>
▽失敗
 服やスマートフォンは確かに自分のものだと感じるが、同時に漠然とした違和感を覚える。

▽成功(失敗に+)
 よく見ると画面は同じ画面で固まっており、触れても画面が動くことはないことに気付く。壊れてしまったのだろうか。

▽クリティカル(成功に+)
 いや、これはそもそも画面が点いているわけでなく、まるで画面が映っているように見えるシールでも貼ってあるかのように見える。

▽ファンブル
 服やスマートフォンは確かに自分のものだ。そういえばスマートフォンの充電が切れかけていたから、使用は控えて充電をしないと。


・スマートフォンを操作しようとする
 どれだけ操作しても画面が動かない。調子が悪いのか、充電が切れかけているのか、とにかく今はあまり触らない方がよさそうだ。

スマートフォンはおもちゃ的な偽物なので、操作しようとしても動きません。

 


[玄関]
 清潔感のある玄関。玄関土間には傘立てと下駄箱があり、廊下に踏み入れてすぐのところには玄関マットが敷かれている。
 土間には母、父、姉、兄の四人分の靴が揃えられており、あなたが先ほど脱いだ靴も置かれている。
 下駄箱の上にはいつだかの旅行で買ったお土産の置物やおしゃれな芳香剤などが置かれている。

<目星><アイデア>
▽失敗
 今日も汚れ一つ無い玄関は、掃除が行き届いているように思える。人が生活しているにしては綺麗すぎるくらいだ。

▽成功(失敗に+)
 いや、本当に綺麗すぎる。掃除だけでこんなに綺麗にできるものだろうか?

▽クリティカル(成功に+)
 よく見ると玄関タイルには土埃一つなく、並んだ靴は買ったばかりのように綺麗で汚れ一つないように見える。

▽ファンブル
 ピカピカの玄関は掃除が行き届いており、母の努力がうかがえる。


・玄関扉
 帰ってきたばかりで忘れ物をしたわけでも用があるわけでもないのだから、ここから出る必要はない。

記憶を取り戻して「ここは自分の家ではない」とハッキリ自覚したら開けて出られます。


[脱衣所・浴室]
 すっきりとした脱衣所。鏡のついた洗面台、洗濯機、洗濯かご、棚が置かれており、どれもピカピカに磨かれている。
 折り戸を開けるとこれもまたすっきりと手入れの行き届いた浴室で、湯船、シャワー、風呂場椅子、棚がある。

<目星><アイデア>
▽失敗
 水垢一つないほど綺麗な湯船には、まだお湯が溜まっていないようだ。

▽成功(失敗に+)
 そういえば、この家で湯船に浸かったことがあっただろうか?

▽クリティカル(成功に+)
 いや、そもそも、水やお湯が出たことがあっただろうか?

▽ファンブル
 綺麗に掃除された湯船には、まだお湯が溜まっていないようだ。まあまだ夕飯も食べていないのだし、今気にする必要はない。

・水やお湯を出そうとする
 蛇口のハンドルをいくら捻っても水もお湯も出ない。調子が悪いのかもしれない。あまり触らない方がいいだろう。


[トイレ]
・一階
 一階のトイレは柔らかなグリーンを基調とした安らぎの空間になっている。温水洗浄便座付きの便器、ペーパーホルダー、壁掛け棚がある。

・二階
 二階のトイレは爽やかなブルーを基調とした癒やしの空間になっている。温水洗浄便座付きの便器、ペーパーホルダー、壁掛け棚がある。

<目星><アイデア>
▽失敗
 とても綺麗に掃除されており、汚れ一つない。毎日掃除されているようだ。

▽成功(失敗に+)
 それはもう、毎日掃除しているかのように。そんなに綺麗にできるものだろうか?

▽クリティカル(成功に+)
 いや、だとしても不自然なほど綺麗だ。まるで一度も使われていないかのように。

▽ファンブル
 とても綺麗に掃除されている。隅々まで気が配られていて、やはり母はすごいなぁ。

・一階か二階のどちらかで成功orクリティカルをしていて、かつもう片方も調べる場合。

<目星><アイデア>
▽失敗
 やはり綺麗に掃除されたトイレだ。何か違和感を覚える。

▽成功(失敗に+)
 何か、何かが致命的に欠けているように感じられる。

▽クリティカル(成功に+)
 よく見れば、便器に水が溜まっていない。しかしそのわりに下水の臭いがすることもなく、いたって清潔なトイレに感じる。

▽ファンブル
 どちらのトイレも手を抜かずに掃除されている。本当に、母には頭が上がらない。

ただそこに置いてあるだけの便器のオブジェみたいなものなので、そもそもどこかに繋がってることもないし水を溜めておく必要もないのです。


[ベランダ]
 二階の廊下からベランダに繋がる扉だが、今は開かず入れないようだ。ガラス戸から何の変哲もない普通のベランダが見えている。

<目星><アイデア>
▽失敗
 ベランダまで綺麗に掃除が行き届いている。しかし、なんだかぼんやりとした違和感を覚える。

▽成功(失敗に+)
 見慣れたはずの景色が、なんだかおかしいように思える。これは本当に見慣れてたものなのだろうか?

▽クリティカル(成功に+)
 よく見ると、二階の高さに対して見える景色の高さがちぐはぐなように感じる。

▽ファンブル
 綺麗に掃除が行き届いたベランダで、外に出られたら風が気持ちいいだろうなと思う。

家の中以外必要ないので、ベランダや窓の外という概念は用意していても物としては作ってないです。


[窓]
 窓から外を見れば、見慣れた近所の景色が広がっている。

<目星><アイデア>
▽失敗
 いつもと変わらない様子だ。しかし何か漠然とした違和感を覚える。

▽成功(失敗に+)
 空の色が目に痛いほど青々しい。空とはこんな色をしていただろうか?

▽クリティカル(成功に+)
 そういえば、先ほど帰宅してこれから夕飯ということは、現在時刻は夕方くらいだろうか。それにしては綺麗に透き通った青空をしているように見える。

▽ファンブル
 いつもと変わらない景色が広がっていて安心感すら覚える。

スマホ画面のように青空広がる景色の写真を貼っているような状態で、色調補正かかってて普通の空色よりちょっと青みが過剰なイメージです。

 


◆◇◆ PCの部屋 ◆◇◆
 見慣れたように感じるあなたの部屋。オフホワイトを基調とした部屋には、ベッド、タンス、クローゼット、本棚、デスクが置かれている。
 そして、部屋の一番奥には、部屋全体の雰囲気からはいささか浮いているように思えるデザインの棚が一つある。

<目星><アイデア>
▽失敗
 確かに自分の部屋のように感じる。いや、本当にそうだっただろうか?

▽成功(失敗に+)
 部屋全体に漠然とした違和感を覚えると同時に、部屋の奥にある棚からはぼんやりと、まるで子供の頃に大切にしていたぬいぐるみを押入れの奥から見付けた時のような、そんな懐かしさのようなものを感じるだろう。

▽クリティカル(成功に+)
 ここはあなたの部屋なのだろうか。ここは本当にあなたの帰るべき場所なのだろうか。部屋を見れば見るほど、言い知れぬ焦燥感のようなものが募っていくだろう。

▽ファンブル
 居心地の良い自分の部屋だ。夕飯までくつろいでも、本を読んでも、服を整理しても、何をしようと自分の自由だ。

[奥の棚と箱]
 部屋の雰囲気にそぐわない、アンティーク調の飾り棚。どれだけ見ても小箱以外には何もしまわれていないようだ。
 小箱は手のひらに収まるほどの大きさで、つやつやとした木製のようだ。長方形の本体にアーチ状の蓋がされた形状で、全体にアンティーク調の意匠があしらわれている。鍵穴があるが、近くに鍵は見当たらない。

・触れる
 小箱に触れると、カチリと小さな音が響いた。鍵を開けた時に鳴る音のようだと感じるだろう。
 さて、あなたはこの箱を開けるべきだろうか。身体の奥からは途方もない渇望感と言い知れぬ焦燥感が開けるべきだと叫んでいる。しかし家族たちの優しい顔が、開けてはいけないと微笑むのだ。

・開ける
 キィ、と小さく軋むような音を立てて箱は呆気なく開いた。
 その途端、頭の中に無数のなにかが流れ込んでくるのを感じる。記憶だ。それは本来持っていたはずの、あなたの記憶だった。今どこに住んでいるのか、普段は何をしているのか、どんなことに興味があるのか、どんな人と知り合いか、どうやって育ったのか、誰に育てられたのか……あなたは誰なのか、あなたは思い出す。
 そして同時に気付くだろう。ここは、あなたの家ではない。この家で感じたやさしさも、あたたかさも、なにもかも、全てまやかしだったのだ。

SANC:(以下参照)
ここでは、これまでに回復してきたSAN値の合計をxとして「x/xd2」の、回復合計が0だった場合は「0/1」のSAN値減少が
発生します。最大では「4/4d2」となります。

・判定後
 頭の奥の方からガチャリと玄関の鍵を開けたような音が響く。そうだ、ここはあなたの家ではないのだから、あなたはあなたにとっての正しい家に帰ることができるだろう。

 

[お帰りとお見送り]
神話生物たちは、廊下を通る際は特に引き止めてきたり邪魔してきたりはしません。帰っちゃうならいいやまた新しい人間連れてこようくらいの気持ちです。おままごとする気のない人間がいつまでもいても邪魔ですし。なので帰らないならもっと遊ぼうとも思うでしょう。
たとえ暴言吐かれても攻撃されても、自分たちは子供や弟妹に対する保護者でもあるという役割なので、やり返したり襲ったりはしません。

たとえこの家の子供でなくなっても、彼らは心優しい一般的な人間の役を遂行しているので、他の人間である探索者を無闇に襲うこともしません。
また探索者は「ここが自分の家であり彼らが自分の家族だ」という暗示は解けて記憶も戻りましたが、まだ「ここは家であり彼らは人間である」くらいの認識疎外の残り香が残っているので、神話生物たちの真の姿を見ることはないし、意思疎通もできます。

探索者が話しかけてくる場合は、適宜「楽しかったね」「あなた(この家の子供としてのPC)が大好き」みたいなことでも言っておけばいいと思います。
また、ここでも役割外の感謝の気持ちはありません。「産まれてきてくれて/私達の子供(兄弟)になってくれてありがとう」は言いますが、「(おままごとを)一緒に遊んでくれてありがとう」は言いません。


・二階
 あなたのものだった部屋から出ると、廊下に並んだ二つの扉が薄っすらと開き、そこから何かが覗いていた。それは人のような形をしながら、しかし人ではなく、ぼんやりとした恐ろしい怪物のように見え、それでもあなたはまだそれのことを「姉と兄だったもの」だと認識できてしまう。
 それらはあなたのことをじっと見つめているようだ。ただじっと、「帰っちゃうの?」とでも言うように。
SANC:1/1d6。

・一階
 階段を降り一階に着くと、廊下に面した扉が二つ、薄っすらと開いているのが分かる。また何かが覗いている。あなたはじっと見つめている。人のような形をしながら、しかし人ではないぼんやりとした恐ろしい怪物が、あなたの「母と父だったもの」のようなそれらが。ただあなたをじっと見つめている。どこか愛おしむような、慈しむような、優しい目をしているように感じられる。
SANC:1/1d6。

・玄関
 玄関に辿り着いた。大きく重苦しい扉が閉じているが、今のあなたなら開けられる。この偽りの家から出て、本当の家に帰ることができるだろう。

玄関から出て帰るのならば⇒END1
この家に残るのならば⇒END2

 


◆◇◆ ED ◆◇◆
[END分岐]
・END1:TRUE END
 記憶を取り戻し玄関から出る
→生還

・END2:HAPPY END
 記憶に関わらずこの家に残る
→ロスト

心休まる安心安全な家庭なので、記憶を取り戻すまではSAN値減りません。
なんならHPは記憶が戻ろうが減りません。だって安心安全な家庭の中で死傷者が出るわけないんですから。

SAN0になったらその時点で残る事になるのでEND2へ。

残りたそうな場合は3回くらい「ほんとに?」みたいに確認してあげてください。普通にロストします。

NPCのRPが必要な場合は適宜がんばってください。


[END1]
 ギィ、と重く軋む音を立てて玄関扉が開く。開いた先に広がっているのは何もない真っ暗な闇だけで、次第にあなたの意識もゆっくりと闇に沈んでいく。
 意識が途切れる直前に、楽しそうな"母"の声が聞こえてきた。
「楽しかったよ、かわいいお人形さん」

 ふっと意識が浮上する。目を覚ますと、あなたは見覚えのある寝具に横になっていた。あなたはあの偽りの家から、あなたの帰るべき場所へと無事帰ってこられたのだ。
 あの記憶は、嫌な思い出として残り続けるだろうか、悪い夢だったと忘れてしまうだろうか。
 なんにせよ、あなたはこれからまたいつも通りの日常へと帰っていくのだ。

END1:【TRUE END】


[END2]
・記憶を戻す前
 漠然と抱いていた違和感が、ゆっくりと溶け落ちて霧散していく。違和感?何を言っているんだ。ここはあなたの家だ。彼らはあなたの家族だ。そのことの、いったい何を疑うと言うのだろうか。

・記憶を戻した後
 確信に変わっていた疑念と違和感が、ゆっくりと溶け落ちて霧散していく。違和感?何を言っているんだ。ここはあなたの家だ。彼らはあなたの家族だ。そのことの、いったい何を疑うと言うのだろうか。

・共通
 ――母が呼ぶ声がする。
 なんだったっけ、ああそうだ、夕飯の時間なのか。
 声を辿ってダイニングまで行くと、もう家族全員揃っていて、しかし夕飯にはまだ手を付けず、みんなあなたを待っていた。
 やさしい声がかけられる。いい匂いが部屋に漂う。きっと美味しいに違いない、母の料理は絶品なのだから。

 こうしてみんなでご飯を食べて、ゆっくりとお風呂に入って、のんびりとしてからベッドに入って眠りにつき、また爽やかな朝を迎えて起きる。平和で、平凡で、平穏な、なんてことない日常があなたを待っている。
 あなたは、心休まる家庭を手に入れたのだから。

END2:【HAPPY END】


◆◇◆ 事後処理 ◆◇◆
[SAN報酬]
生還:1d6+1。

 



◆◇◆ 後書き ◆◇◆
「ポットラックパーティー企画2022」に参加する性癖シナリオかぁ~~~書くかぁ~~~と思ったら出来てしまいました。あーあ。
作者は書きながら「人が人に回すシナリオか……?」などと考えていました。"""厭"""の煮凝り。

信じていたものがハナから全部うそっぱちで、そもそも信じていたのなんて自分だけだったと気付いた時の空虚な絶望感っていいじゃないですか。
これさえあれば生きていける立っていられると思って縋っていた足場がガラガラ崩れて霧散して"いきばしょ"を失った人間ってかわいいと思うんですよ。
しかもそれがかつて、あるいは今もなお望んでいたものだったのなら……?
さらに"家族"や"家庭"、"保護者"なんて、無力な子供からしたら頼らざるを得ず縋らざるを得ないものですから、それが突然断絶されたら?
そしてそれが"言いつけを守らなかった自分の行動一つのせい"だとしたら?

大体そんな感じの性癖を詰めました。悪趣味。
そしたら案の定書けば書くほどクソがよって思うことになりました。ほんとクソ。
そんでその辺の恐怖や絶望を余すこと無く味わうなら、本当になにも頼るあてのない一人ぼっちの方がいいだろうなと思ったので、描写は大体ソロを想定したものだけ書いてあります。
ほら、"孤独"も恐怖と絶望のひとつでありスパイスでもあるので。
とは言えこれタイマンとか2PLとかでも楽しいことになりそうではあるし、構成的に複数人でもいけるから、まあちょこちょこ改変&アドリブすればソロ以外でも回せるようにするか、と思ってそのようにしてあります。

エンディングは、「真実を知って現実に帰って来られてよかったね!」な【TRUE END】と、「これからず~~~っと優しくて温かくて心休まる家庭で暮らせて幸せだね!」な【HAPPY END】の二種類にしました。
途中までは「真実を知った上でこの家に残ることを選ぶ」を別エンドにしようとしてましたが、一緒でいいじゃんと思って統合しました。すっきり!
ここだけ見れば帰るか残るかの二択で生還/ロストは50%ずつなんですけど、じゃあ実際回したとしてどれくらいの割合でどちらを選ぶかが全く見当付かないんですよね。
作者のPCでも元気に帰って来れそうな奴と絶対無理だろうって奴とまちまちで、これは一概にロスト率出せないなと思ったので「不明」にしました。
多分PC/PLの思考や思想によります。なのでKPが「このPC/PLなら生還/ロストしそうだな」はなんとなく読めなくもなさそうだと思うので、心配な方は、こう、がんばってください。

タイトルの「アジュガ」はシソ科キランソウ属の植物で春の花です。
花言葉は「強い友情」「心休まる家庭」、4月26日の誕生花です。
そういうことです。

あと今回ちょっとテストプレイしてる余裕がなかったのでちょっと詰めが甘いところがあるかもしれません。
その関係でそのうち回したらあっちこっちに何かしら追記や修正をするかもしれませんが、悪しからず。

色々ごちゃごちゃ書きましたが、作者はみなさんが楽しんでくださればハッピーですので、お好きなように遊んでください。お読みいただきありがとうございました!