人数:一人
時間:2~3時間
推奨:INT、POW
準推奨:目星、図書館
発狂:低~中確率
ロスト:低~中確率
◆◇◆ 概要 ◆◇◆
傾ぎ始めた太陽が未だじりじりと肌を焦がす真夏の昼下がり、あなたはとある家の玄関扉を開けたところだった。
はて、どうしてこんな時間に、こんなところで、こんなことをしているのだろうか。
性癖:和ホラー×湿度×侵蝕
ポットラックパーティー企画2024参加作品。
突如行方不明になった知人■■■を探すシナリオです。
始終じっとりべったりした雰囲気です。後味もよくはないと思います。
のんびり進行のテキストセッションで2~3時間くらいかなと考えています。
◆◇◆ 利用規約 ◆◇◆
シナリオ利用規約に目を通し、理解いただいた上でご使用ください。
◆◇◆ 権利表示 ◆◇◆
本作は、「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』シリーズの二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」「新クトゥルフ神話TRPG」
◆◇◆ 権利表示 ◆◇◆
2024.07.21 公開開始。
以下本文です。
◆◇◆ 背景 ◆◇◆
一般シャンが適当な人間に寄生して洗脳して夢をみせておちょくって遊んでいる。
存在しない人間を存在していると思い込ませ、失踪したと思わせ、捜索の過程で嫌な思いをさせ、アザトースが鎮座する空間を見せ、そこへ放り込むという悪辣なドッキリみたいなことをしている。
シナリオ開始時点からEND1で目を覚ますまで、PCはずっと夢の中で行動している。
さらにシャンの洗脳がはたらいているため、ある程度の思考や行動を誘導されることになる。
洗脳を解いてシャンを夢(頭)の中から追い出すことができたら目覚めることができる。
その前に社の扉を開けてアザトースを見てしまったら精神を生贄として捧げられてしまう。
知人も町も神も鳥居も社も全て架空で非存在。
存在しない場所で存在しないものに怯えながら存在しない知人を探すシナリオになっている。
◆◇◆ NPC ◆◇◆
[知人]
坂井成(さかい なる)
シャッガイが作り出した非存在非実在知人。
名前はシャンが適当につけた。
メタ的には「さかい=シャッガイ+なる=Null」
几帳面で真面目な人柄なため、玄関開けっ放しで家も知人も放って何も言わず約束まで破るのは明らかにおかしいと思える人物。
それ以外は性格も年齢も性別も外見も諸々一切決まっていない(シャンとしては詳細を決める必要性がない)ため、適宜捏造して構わない。
[元凶]
シャッガイからの昆虫
(株式会社アークライト『クトゥルフ神話TRPG』初版、KADOKAWA、2015年、179ページ。)
適当な人間に寄生して洗脳しておちょくって遊んでいる一般通過シャン。
引き際をわきまえているためヤバそうだなと思ったらすぐに逃げ出す。
[神たち]
下級の異形の神たち
(株式会社アークライト『クトゥルフ神話TRPG』初版、KADOKAWA、2015年、210ページ。)
今日もアザトースをあやしている。
アザトース
(株式会社アークライト『クトゥルフ神話TRPG』初版、KADOKAWA、2015年、204ページ。)
今日もすやすや。
◆◇◆ 導入 ◆◇◆
・描写
傾ぎ始めた太陽が未だじりじりと肌を焦がす真夏の昼下がり、あなたはとある家の玄関扉を開けたところだった。
はて、どうしてこんな時間に、こんなところで、こんなことをしているのだろうか。
そうだ、知人と待ち合わせをしていたのに、どれだけ待っても姿を見せず連絡もつかないものだから、家まで迎えに来たのだ。
そしてチャイムを鳴らすも反応がなかったため、何気なくドアノブに手をかけたら鍵がかかっておらず、容易に開くことができたのだった。
目の前には整然とした玄関が口を開いている。
人の気配は、ない。
・説明
既に夢の中である。
時間は14時頃。
夢の中のため時間はなんとなくで進んでいく。
具体的には場面転換ごとに大体何時くらい、と進行していくことになる。
現在時刻のアナウンスは、描写にない限りはPLやPCが気にした時だけするといいだろう。
服装は普段外出する際に着ているようなもの。
持ち物はスマートフォンなどNPCと連絡を取ることに使用した機器のみ。
普段持っているものや財布すらもないが、まあそんなこともあるよね。夢の中だし。
PCの住む家からは少し離れたところにある、ということになっている。
PCが自宅に帰ることはできない。帰ろうとしても急に道が分からなくなったりNPCの家の前に戻ってきてしまったり謎の壁があって進めなくなっていたりするといいだろう。
町もNPCと同様に架空の存在のため外へは行けない。
NPCの家は一人暮らしのアパートを想定しているけど、卓やPCに合わせて変えてもOK。
玄関に靴は一足もない。
全て収納しているだけか、履いて出掛けているのかは見ただけでは分からない。
◆◇◆ NPCの家 ◆◇◆
[室内]
・描写
知人――坂井成(さかい なる)の家は相変わらず整理整頓が行き届いていた。以前に来た時と変わらない、普段通りの印象を受ける。
だからこそ、呼びかけても家中どこを探しても、家主である坂井が姿を現さないことだけが異様だった。
几帳面で真面目な坂井が、約束を破って何の連絡もなしに姿を消すだろうか。もしかしたら、なにかあったのかもしれない。
<目星>
・失敗描写
家の中を見て回っていると、不自然に紙切れが落ちていることに気が付いた。
・成功描写(失敗にプラス)
よく見ればあちこちに薄っすらと埃が積もっている。
掃除を欠かすような性格ではないはずだから、しばらく帰ってきていないのかもしれない。
・説明
探すならスマホや財布、鞄といった外出の際に持ち歩くようなものが家の中にないことに気付ける。
そう考えて玄関を見ると、靴もよく見る一足がないことに気が付くだろう。
[メモ]
・描写
メモ帳か何かの切れ端のようだ。
見覚えのある坂井の字で「誣疏←郷土資料」と書いてある。
<アイデア><オカルト><歴史>
・失敗描写
何も分からない。
郷土資料と書かれているからには、図書館で調べたら何か分かるだろうか。
・成功描写
誣疏という文字に全く見覚えがなく、見当もつかない。読むならば「ふそ」になるのだろうか。
郷土資料と書かれていることから、地域に伝わる何かなのだろうか。
図書館で調べたら何か分かるかもしれない。
・説明
失敗してても読むなら「ふそ」になるかも、くらいはPLに伝えていいと思う。不便だし。
もちろん伝えずになんか適当に読んでもらっても構わない。
[スマホ]
・描写
スマホのロック画面は青緑色の渦のような模様を背景に、7月42日14時9999分を示している。
それ以外の画面にはどうやっても移れない。壊れてしまったのだろうか。
・説明
スマホはなんかバグってて使い物にならない。
まあ使えてもどこにも繋がらないんけど。夢だから。
場面転換で時間は経過するが、スマホ画面の時刻は変化しない。めんどくさいので。
[図書館に向かう]
・描写
あなたはここから少し歩いたところに市立図書館があることを知っている。地元の郷土資料も置いていたはずだ。
◆◇◆ 町 ◆◇◆
[町]
・描写
日差しが照りつける町中には誰もいない。また人間以外の生物の気配もしない。
影が伸びてきたとはいえ、まだまだ暑いからだろうか。
・説明
15時くらい。
人間も猫も鳥も生き物は探索者とこっそりそばにいるシャン以外に一切いない。
[建物]
・描写
店舗や民家などに入ろうとするならば、扉が開かなかったりドアノブがぐにゃりと溶けたり出入り口に見えない壁が存在したりして入ることができない。
建物の中からも人や生き物の気配はしない。
・説明
目的地である図書館以外には入れないようになっている。
公園くらいオープンな施設なら入れてもいいかも。誰もいないけど。水飲んでもいいよ。クッソぬるいけど。
[羽音判定1]
<アイデア>
・失敗描写
なにか低い、ブーンというような音が聞こえた気がした。耳鳴りだろうか。
・成功描写
低くブーンというような音が、頭のすぐ近くで聞こえた気がした。音がした方を見ても何もない。
耳鳴りだろうか。それにしては何か、言いしれぬ不安感をもたらす音だった。
SANC:0/1。
・説明
観戦中のシャンの羽音。
静かなので羽音は聞こえるものとして、それに意識を向けられるか、変だと思えるかという点をアイデアで判定する。
4回あるこの判定に成功した数だけ終盤の判定にボーナスが入る。
一回目はNPCの家を出てから図書館へ向かう道中で行う。
◆◇◆ 図書館 ◆◇◆
[図書館]
・描写
市立図書館はこぢんまりとした二階建ての建物だ。市名が書かれているはずの場所はぐしゃぐしゃに塗りつぶされたようになっていて読むことができない。
中に入ると利用者はおろか司書などのスタッフの姿も見当たらないが、それ以外は至って普通の図書館に見える。
空調が効いた館内には様々な蔵書が配架されている。郷土資料の棚は一階の隅にあるようだ。
・説明
16時くらい。
決める必要がない市名は決められていないため読むことができない。
[書架]
・描写
様々な本が置かれているようだが、そのどれもが見たこともない文字で書かれており読むことはできない。
・説明
全部違う本にして作り込むことをめんどうくさがったシャンが適当に置いたもの。
[郷土資料]
・描写
郷土資料の棚にはびっしりと同じ装丁の本が並んでいる。
その全ての背表紙に「誣疏」と書かれている。どれも同じ本のようだ。
<図書館><オカルト><歴史>
・失敗描写
誣疏(ふそ)という存在に関して、歴史やオカルトなど様々な観点から小難しく記された本のようだ。
小難しいため内容はよく分からなかったが、市内の森に社がありそこに祀られていること、鳥居をくぐってしばらく歩くと辿り着けることは分かった。
・成功描写
誣疏(ふそ)という存在に関して、歴史やオカルトなど様々な観点から小難しく記された本のようだ。要点をまとめると、以下のようなことが書かれている。
誣疏とはこの地域に祀られている神である。
誣疏は盲目で、聴くことによってこの世の全てを識ることができる。
眷属が常に傍に侍っており、澄んだ笛の音によって讃えられ、現在は封印され社の中で眠りについている。
突如怒り狂った誣疏によって一帯の集落が滅ぼされかけた時に、半ば騙すかたちで封印することに成功した。
封印が解けた場合にどうなるか分からないため、社は厳重に管理され、定期的に鎮めるための祭りを行うなどしている。
社は市内の森の中に造られており、鳥居をくぐってしばらく歩くと辿り着くことができる。
あなたは衝撃を受けるだろう。この市内にそんな恐ろしい存在が祀られており、かつ坂井がそこへ向かったかもしれないのだから。
SANC:1/1d2。
・説明
全部違う本にして作り込むことをめんどうくさがったシャンが必要なものだけ置いておいた。
誣疏(ふそ)は「誣(あざむく)+疏(とおす)」で、アザトースを元にした架空の神。
なので名前にも存在にも特に意味はない。
それっぽいことを書きつつ、じんわりとアザトースや人間を小馬鹿にしてる。
[森に向かう]
・描写
郷土資料の棚の端にぽつんと置かれたこの辺りの地図によると、ここから少し歩いた場所に森があるようだ。鳥居の場所も記されているが、社については記載がない。
◆◇◆ 再び町 ◆◇◆
[町]
・描写
日が大分傾いてきた。しかしまだまだ蒸し暑く、むしろ湿度が増したように思うだろう。
町中には人影がまばらに見えるようになっていた。黒く、縦に長く、陽炎のように揺らめく人影たちが立っていたり歩いていたりする。
生き物の気配は相変わらずしない。
SANC:1/1d2。
・説明
17時くらい。
人影はPCに反応することはなく、触れることもできない。ただそこにいるだけ。
人影はただの人間っぽいかたちの影。ちゃんとした人間っぽいものを容易するのがめんどうだったシャンの怠惰。
[羽音判定2]
<アイデア>
・失敗描写
低いブーンという耳鳴りのような音が聞こえた気がした。その瞬間にぞっと寒気のするような感覚もあった。
・成功描写
低くブーンというような音が、頭のすぐ近くで聞こえた気がした。同時にひどくぞっとする悪寒のようなものも覚えた。
耳鳴りだろうか。虫の羽音のようにも聞こえたが、周囲にそれらしいものは何もない。
SANC:0/1。
[電話]
・説明
もしも図書館内の電話や公衆電話などを使おうとするならばざらざらとしたノイズ音だけが流れて通じないことが分かる。
また、NPCの家のテレビなどもつけるならば同じような状態になる。
◆◇◆ 森 ◆◇◆
[鳥居]
・描写
青々とした森を赤みがかった太陽が照らしている。
日が陰り影も大きくなったため日差しに肌を焼かれることはなくなったが、代わりに熱され蒸された空気と蒸発しない汗がべたりと皮膚に張り付いている。
暗い色の石造りの鳥居が森に口を開けている。森の中は鬱蒼としており、道の先は濃い影になりよく見えない。
じっとりとした湿度とまとわりつく熱気も相まって、まるで何かの生き物の口のようだ。
SANC:0/1。
・説明
18時くらい。
やはり人や鳥や虫など生き物の気配は一切ないし、実際にPCとシャン以外に生き物は存在しない。
どんどん湿度が増して不快になっていく。
[羽音判定3]
<アイデア>
・失敗描写
低いブーンという虫の羽音のような耳鳴りのような音が聞こえた気がした。
言いしれぬ嫌な気持ちが腹の底から湧き上がってくるような音だった。
・成功描写
低くブーンというような音が、頭のすぐ側から聞こえた気がした。脳髄を直接這い回るような、ひどく不快な音だ。
耳鳴りのような、虫の羽音のようなそれの出どころを探しても、それらしいものは見当たらない。
SANC:0/1。
[道]
・描写
鳥居をくぐって、鬱蒼とした森の中に続く薄暗い一本道を歩いていく。
日差しは届かないのにひどく暑い。じっとりとした水気を孕んだ空気がべたべたと肌にまとわりついてくる。乾くことのない汗が次々と流れ落ちる。
自分と周囲の境目が曖昧になっていく。じきに一体となって、溶け出して、霧散していくような、そんな漠然とした感覚を覚える。
空気を吸っているのか溺れているのかも分からないような息苦しさの中、次第に頭がぼうっとしてきて、思考も足取りもおぼつかなくなってくる。
それでも、あなたの足は森の奥へと進んでいく。
SANC:1/1d2。
・説明
シャンの洗脳の効果で、不快感を覚えさせられ、社に向かわされている。
[羽音判定4]
・失敗描写
低いブーンという羽音のような耳鳴りのような音が聞こえた気がした。
まるで頭の中を何かが飛び回っているような不快感を覚えたが、周囲には何もない。
SANC:0/1。
・成功描写
低くブーンというような音が、頭の中から聞こえた気がした。
羽虫が脳髄を掻き乱すようなひどく不快な音だ。
しかし周囲を見回しても何もない。虫の一匹も、生き物の気配も、風すらもない。停滞した湿気だけがあなたにまとわりついている。
では、先程から聞こえるこの羽音は、一体なんなのだろうか。
SANC:0/1d2。
[洗脳解除判定]
<POW*5>
※羽音判定に成功した数×5のボーナス(最大+20)
・成功描写
坂井成とは、一体誰だ?
あなたにそのような知人は存在しない。あんな家も知らないし、このような町にも来たことがない。名前の分からない市立図書館も、蠢く人影のようなものも、誣疏なんてものも、存在しない。
これは夢だ。
あなたは突然理解する。
知らない知人も、人影蠢く町も、生き物のいない森も、こんなところまでやってきてしまったのも、全てこれが夢だからだ。
あなたが現実だと思い知人を探したその全ては、ただの夢だったのだ。
SANC:1/1d4。
・説明
成功することで洗脳が解けて夢であることに気が付くことができる。
アイデアでは洗脳の影響を受けてしまい洗脳を解くことはできず、意思の力によって洗脳を跳ね除けることになるので、POW*5で判定する。
[虫]
・描写
低くブーンというような音が耳元で響く。反射的にそちらを見れば、それは確かに存在した。
まぶたのない大きな目、頭のところから曲がりくねって生えた巻きひげ、光沢のある触肢に覆われた十本の足、三角形の鱗で覆われた半円形の羽、そして蠢く三つの口。
それは鳩ほどの大きさをした異形の虫のように見えた。
低くブーンというようなひどく耳障りな羽音を立てて、あなたの周りを飛翔しているそれと、確かに、目が合った。
SANC:0/1d6。
・説明
洗脳が解けたので羽音以外もしっかりと知覚できるようになった。
洗脳を解いてしっかり知覚しないと、どれだけ暴れたりしてもぶつからない。
逆に洗脳を解いてしっかり知覚すれば物理が効く。
シャンはそれが分かっているので、気付かれたことに気付いた途端に逃げ出す。
⇒シャンを追い出す END1
[社]
・描写
どれだけ歩いただろうか。大分暗くなった森の奥深くに、小屋のようなものが見えてきた。
木造の小さな建物は大きく立派な屋根がついており、人ひとりがやっと通れるほどの扉が一つある。
凝った装飾などのない簡素な造りだが、おそらくこれが社なのだろう。
空気は湿度を増し、重苦しいほどになっている。呼吸すらままならない。今にも溺れてしまいそうだ。
坂井は本当にこんなところにいるのだろうか。いたとして、生きているのだろうか。
SANC:0/1。
・説明
洗脳解除判定に失敗している場合、チャンスを与えるといいだろう。
ただし二度目は羽音判定によるボーナスはなくなる。
またシャンがそう何度もチャンスを与えるとも思えないので、二度目に失敗したら社の扉を開けさせる強制力がはたらき、社の中からNPCの声が聞こえるようになる。
洗脳解除判定に二回失敗した場合は以下の描写を流す。
・描写
不意に、社の中から音が聞こえた気がする。か細い、声のような音だ。
そうだ、それは確かに、坂井成の声だった。助けを求めている。開けてほしいと言っている。
社の中にいるのだろうか。閉じ込められてしまったのだろうか。なんにせよ、早く扉を開けなくては。
⇒社の扉を開ける END2
◆◇◆ ED ◆◇◆
[END分岐]
シャンを追い出す
⇒END1(生還)
社の扉を開ける
⇒END2(ロスト)
[END1]
・描写
あなたと目が合ったことに気が付いたのか、それはどこか慌てた様子であなたに背を向け飛び去って行く。
空気中の水分に溶けるように、それの姿と羽音が消えたと思ったその時、ぐらりと足元が揺らぐ感覚を覚える。
地面が波打ち、森が融解していく。立っていられないのに転ぶこともなく、ぐにゃりぐにゃりと歪んでいく空間に身を任せるほかなくなる。
落ちていくような、浮かんでいくような、不思議で不快な感覚に襲われる。意識が溶け出す。湿気た空気が流れ込んでくる。
意識が、暗転する。
SANC:1/1d2。
ふっと意識が浮上し、ばっと飛び起きる。身体中がべたついた汗で濡れている。
あなたは確かに覚えのある寝具の上で目を覚ました。見覚えのある部屋の中にいて、気道を塞ぐような湿気も、まとわりつく熱気も存在しない。
あなたは夢から覚めたのだ。
時計や窓の外を見れば、もう日が昇り始める時間だった。朝日が見知った町を照らしていく。
あの体験は夢だった。全て夢だったのだ。しかし、あの夢の中で、森の奥の社に辿り着いていたら、社の扉を開けていたら――どうなっていたのだろうか。
「擬而依」END1
・説明
逃げられる前に一発入れたい場合はDEX対抗。勝利した場合はこぶしなりキックなりが当たるが、素早いため掴むことはできない。
シャンがPCの夢の中、頭の中から出ていったため夢がかたちを保てず崩壊する。
そして無事に目が覚めて生還エンド。
[END2]
・描写
扉はあっけなく開いた。
そしてそこには広大で真っ暗な空間が広がっている。
狂った太鼓と単調な笛の音が響くその暗闇の中では、種々様々な形状の巨大な怪物たちが、より大きななにものかを中心として、精神を感じさせぬままにひたすら蠢いている。
SANC:1/1d20。
そしてその中心には、なにかがいた。
何、と言えばいいのだろうか。形容のしようがないそれは超常的な巨体をゆっくりと蠢かせている。
それだけ。ただそれだけだった。
それはただそうしているだけで、精神も知性も感じられない。ただ、そこにあるだけの、存在。
それでも確かにそこにいる。存在している。蠢いている。讃えられている。真っ暗闇の中、確かにそれが分かる。
これが、例の神なのだろうか。
このような異常の存在が、この宇宙のどこかに確かに存在するというのだろうか。
SANC1d10/1d100。
???「探しにきてくれてありがとう」
突然背後から声がかかる。
振り向けば、真っ黒な人型をした坂井成が立っていた。
そして、あなたを社の扉の向こう側へと突き飛ばした。
坂井成とは、一体誰だ?
あなたにそのような知人は存在しない。あんな家も知らないし、このような町にも来たことがない。名前の分からない市立図書館も、蠢く人影のようなものも、存在しない。
これは夢だ。
そう認識した時、あなたの身体がぐにゃりと歪む。
歪曲した空間を通り抜けて、異形の神のもとへ落ちていく。
浮遊するような感覚を覚えた時、あなたの意識が溶け出す。淀んだ空気が流れ込んでくるのを感じる。
知人だと思っていた真っ黒な人影が扉の向こうからじっとこちらを見つめている。
ぐちゃぐちゃに散らばり、混ざり、溶けていくあなたが最期に聞いたのは、嘲笑うような低い羽音だった。
「擬而依」END2
・説明
扉の先はアザトースがいる場所に繋げられている。
直後にすぐ描写が続くため、発狂処理はお好みで。
アザトースのいる空間へ突き飛ばされ、精神が崩壊するとか生贄にされるとかしてロストエンド。
◆◇◆ 事後処理 ◆◇◆
[SAN報酬]
生還:1d6。
◆◇◆ 後書き ◆◇◆
19日に思いついて21日に書き上げました!!
何も思いつかないからポトラは見送りかな~とか思ってたんですけど、なんか突然思いついちゃったので……。
・短くてさっくり終わるやつ
・よくある行方不明の知人を探すところから始まるやつ
・現実で知り合いを探していたと思ったら夢の中で知らない非存在を探していたやつ
・湿度で溺死するようなやつと不安と違和感となんか嫌な感じが積み重なって疑念になるやつ
みたいなテーマで書きました。
じっとりしてべたべたして湿気ってて生温かくて人間の口の中に手を突っ込んだ時の感覚みたいな不快感の話が好きなので。
シナリオタイトルはNPCという架空の存在を餌にどんどんヤバイところに引き込まれていく感じから疑似餌を連想し、漢字をそれぞれ「にせる」「そして」「寄生する」みたいなイメージで決めました。
シナリオ本編と一緒で大体雰囲気なので深い意味はないです。
思いついたまま勢いで書いて案の定テストプレイする時間もなかったのでそのうち修正が入ると思います。
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